ChatGPTの回答の質は、モデルの性能より先に、指示文(プロンプト)の書き方で決まります。そして実務でのコツは、うまい指示文を毎回考えることではなく、一度作った「型」を保存して使い回すことです。
この記事では、どんな業務にも応用できる基本の型と、中小企業の実務でそのまま使える用途別テンプレート5本を紹介します。[ ]の部分を書き換えるだけで使えます。
基本の型:5つの要素で書く
指示文は、次の5要素に分けると安定します。
- 役割:誰の立場で考えるか(例:丁寧な営業担当、地域店舗のSNS担当)
- 目的:何のための文章か、誰が読むか
- 事実:使ってよい情報(ここは必ず自分が渡す)
- 条件:守ってほしいルール、避けたい表現
- 出力形式:箇条書き・表・文章、分量、案の数
汎用テンプレートはこうなります。
あなたは[役割]です。[目的](読者は[誰])のための文章を作ってください。
事実(これ以外のことは書かない):
・[事実1]
・[事実2]条件:[丁寧な口調/専門用語なし/誇張しない など]
出力形式:[箇条書き・◯字前後・案を3つ など]
ポイントは「事実」の欄です。ここを渡さないと、AIはもっともらしい創作で埋めてきます。文章の組み立てはAIに、事実の管理は人に——この分担が型の心臓部です。
用途別テンプレート5本
1. メール返信の下書き
あなたは丁寧な事務担当です。次の条件でビジネスメールの返信文を作ってください。
・相手:[取引先の担当者/お客さま]
・状況:[日程調整の依頼を受けた など]
・伝えたいこと:[15日午後なら可/場所はこちらから伺う]
・条件:丁寧だが硬すぎない。あいさつは短く。最後に次のアクションを一文
・長さ:簡潔に
受信メールを丸ごと貼らず、要点だけ書き写すのがコツです(個人情報を渡さないためでもあります)。
2. お知らせ文(ホームページ・店頭掲示)
店舗のお知らせ文を作ってください。
・内容:[8月13日〜15日は夏季休業]
・読者:常連のお客さまと、初めてサイトを見る人の両方
・条件:冒頭の一文だけで内容が分かるように。お詫びは簡潔に、暗くしない
・出力:ホームページ用(100字前後)と店頭掲示用(30字前後)の2種類
3. 会議メモの要約(議事録のたたき台)
以下は会議の走り書きメモです。議事録に整えてください。
・構成:日時・参加者/決まったこと/保留・宿題(担当と期限)/次回
・条件:メモにない内容は補わない。不明な箇所は【要確認】と印を付ける
(ここにメモを貼る)
「勝手に補わない+【要確認】」の2条件が、議事録づくりの事故を防ぎます。音声からの文字起こしと組み合わせる方法は議事録自動化の記事で解説しています。
4. よくある質問(FAQ)の整理
以下は当店に寄せられた質問のリストです。
・内容が近い質問をグループにまとめ、グループ名を付けて多い順に並べてください
・そのあと、各グループの代表質問を1つずつ選んでください
(質問リストを貼る)
回答文を作る段階では、テンプレ1と同じく「事実」を渡して書かせます。
5. キャッチコピー・紹介文の案出し
[蓮田市の整骨院]のキャッチコピー案を10個ください。
・読者:[デスクワークで肩がつらい30〜40代]
・強み(事実):[国家資格者が施術/平日20時まで/駅徒歩5分]
・条件:誇張しない。「絶対」「No.1」は使わない。10個はそれぞれ違う切り口で
案出し系は「数を出させて人が選ぶ」のが正しい使い方です。1案を磨かせるより、10案から2つ選んで組み合わせるほうが早く良いものになります。
テンプレを使うときの3つの注意
- 事実は自分が渡す:「当店の強みを書いて」のように事実まで任せると、存在しない実績を創作されます
- 個人情報・機密を入れない:氏名・連絡先・契約内容・未公開の数字は伏せてから。線引きはセキュリティ基本ルールの記事を参照してください
- 出力は下書きとして扱う:日付・金額・約束の表現は必ず人が確認してから使います
運用:テンプレ集を会社の資産にする
テンプレートの真価は、育てて共有したときに出ます。
- メモアプリに「プロンプト集」を1つ作る:この記事の5本をコピーして、自社用に書き換えたものを保存します
- 毎回同じ手直しをしていたら、条件に追加する:「絵文字を消す作業」を3回やったら、条件に「絵文字なし」を足す。これがテンプレ改善のすべてです
- 担当者間で同じ型を使う:文章の品質が人によらず安定し、引き継ぎも楽になります
どの業務から使い始めるか迷っている段階なら、先に業務棚卸しの記事で「最初の1業務」を決めるのがおすすめです。
指示文のチェックリスト
- 役割・目的・事実・条件・出力形式の5要素が入っているか
- 事実を箇条書きで渡し、「事実以外は書かない」と指定したか
- 個人情報・機密情報が混ざっていないか
- 案の数や文字数を指定したか
- うまくいった指示文をプロンプト集に保存したか
よくある質問
型どおりに書いたのに、使えない回答が返ってきます
多くの場合、「目的と読者」か「事実」が薄いのが原因です。誰が読むのかを1行足す、事実を2〜3個増やす、で大きく変わります。それでも合わなければ、「もっと短く」「別の切り口で3案」と会話で追い込んでください。1回目の出力は素材、2〜3往復で完成が実務の感覚です。
指示文は長いほど良いのですか?
長さではなく要素です。5要素が揃っていれば数行で十分ですし、無関係な背景を長々書くと、かえって出力がぼやけます。
英語で指示したほうが精度は上がりますか?
日本語の業務文書を作るなら、日本語の指示で問題ありません。出力の言い回しを日本語のニュアンスで直す前提なら、最初から日本語でやり取りするほうが速いです。
無料版でもこのテンプレは使えますか?
すべて無料版で使えます。まず無料版でプロンプト集を育てて、利用頻度が上がってから有料版を検討すれば十分です。始め方の全体像はChatGPT導入の記事にまとめています。
まとめ
ChatGPTを実務で使いこなす近道は、指示文の「型」を持つことです。
- 基本は5要素:役割・目的・事実・条件・出力形式
- メール・お知らせ・議事録・FAQ・案出しの5テンプレから始める
- 事実は自分が渡し、出力は人が確認してから使う
- 同じ手直しを2回したら条件に追加——テンプレは育てるもの